日本の伝統ある「きもの」は母から娘へと永遠に残したい財産です。私も縁あっ
て泥染めの大島を買う機会に恵まれましたが、着るチャンスもなくタンスにねむっ
ていました。ある時、この大島を十二才下の妹に「譲り」として帯を付けてあげるこ
とになりました。一度も袖を通さず、少し惜しい気持ちもありましたが、喜んでくれ
たので嬉しくなりました。その後、息子にお嫁さんが決まった時には、いずれ娘にと
心積もりしていた紬の付け下げを、帯を付けてあげました。私の嬉しい気持ちを
託した紬を、嫁が喜んでもらってくれたのは何よりです。こうして数少ないきものの
中から、二枚が離れていきましたが、未練がましい気持ちはありません。次の持ち
主のところで花開かせてくれれば幸いです。