数年前の夏、実家に帰省した時に、母が「昭和八年に着た花嫁衣装の帯を、
二枚に作り変えたから一枚あなたにあげる」とくれました。
六十二年も前の古い帯です。少々重いものの、品のある模様で、今でもきちんと
した式にも立派に通用しそうでした。和服は大切に手入れすることにより、時を
超えて生きてくるのだと感動しました。帯を私に手渡すとき、少しさびしいような母
の表情がありました。私自身も、「いつかこの帯が形見になってしまうかも」とふと涙
ぐみそうになったことを覚えています。
時々引出しを開けて、母を想い、いつまでも元気でと願っています。